理事長挨拶 理事長 松本 俊博 <元 株式会社NHKエンタープライズ 常務取締役>
理事長 松本 俊博
このたび、NPO法人ブロードバンド・アソシエーション(BA)の理事長を拝命いたしました。2003年の創立以来、諸先輩方が築いてこられた産学官連携の蓄積を受け継ぎ、会員の皆様とともに次の時代を切り拓いてまいる所存です。
BAの設立趣意書は、情報通信技術の急速な発達を新たな産業革命と捉え、その本質を「コミュニケーション(相互理解)」に見いだしました。技術の発達は「コンピュータの時代」から「コミュニケーションの時代」へ──この洞察から20余年を経て、私たちはいま、その先にある「知能(インテリジェンス)の時代」の入口に立っています。
AIは、知識の生み出し方、意思決定のあり方、産業と社会の土台そのものを組み替えつつあります。ネットワークの役割もまた、根本から変わろうとしています。これからのネットワークは、人と人だけでなく、人とAI、AIとAIを結び、その網のすみずみに知能が宿ることで、全体がいわば一つの巨大な知能として働く基盤へと進化していきます。情報を運ぶ基盤から、知能を宿す基盤へ。この転換の先に、Beyond 5Gを含む次世代のブロードバンド社会があります。
同時に、デジタル基盤は地政学の主戦場となりました。半導体やデータといった資源をめぐる争いから、標準化や安全保障といったルールづくりの競争まで、世界の競争と協調の枠組みは大きく揺れ動いています。誰がどのような価値観のもとで基盤を設計し、運用するのか。それは産業競争力のみならず、社会の信頼と安全を左右する問いです。分断が深まる世界においてこそ、創立の原点である「より良き世界を築くためのコミュニケーション(相互理解)」の精神は、いっそう重い意味を持ちます。
この大変革を直視しつつ、日本ならではの強み──信頼性、現場に根ざした実装力、そして豊かなコンテンツと文化を生み出す力──を結び、人間中心で開かれたデジタル社会の姿を世界に示していくこと。それが、いま日本に求められている役割だと考えます。BAは、通信、放送、コンテンツ、AIといった分野の垣根を越えて、産・官・学の知見が交わる対話と連携のプラットフォームとして、日本から発信すべき論点を磨いてまいります。
産業界、官界、学界の皆様、そしてBAの活動に関心をお寄せいただいているすべての方々の、変わらぬご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。