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BAクリエイターズサロン:
21世紀の情報基盤であるブロードバンドによって、21世紀型サービス、ビジネスを創出する時代、コンテンツが主役になる時代です。BAクリエイターズサロンは、デジタルコンテンツに関係する経営者、管理者、クリエイティブ部門担当等を対象とし、ブロードバンド時代のデジタルコンテンツ・クリエイターの育成・支援を目的に、為ケ谷顧問を座長とし、次世代を担うクリエイターをお招きし、3カ月に1回程度、勉強会と名刺交換会を開催しております。
これまでの実施状況は こちら(PDFファイル)、実施概要は下記に掲載。

Jun 09, 2011

第15回BAクリエイターズサロン


講師:塩田 周三 氏(株式会社ポリゴン・ピクチュアズ 代表取締役)

  開催日時:2011年6月9日(木) 19:00~21:00
  開催場所:東放学園キャリアーサポートセンター

テーマ:「クリエイティブ業界に於けるマネジメント:ポリゴン・ピクチュアズのケーススタディ」


参加者数:63名

講演会場風景と講演概要
「日本のCG映像制作業界に於いて、どのようにクリエイティブをマネージし、ビジネス展開をしているのか」を、ポリゴン・ピクチュアズ社の歴史を辿りながら、具体的な取り組みについてお話を頂いた。

塩田氏は、「クリエイティブ企業の経営」に付いて、次の3点に集約してお話された。「1.価値の創造」「2.市場の開拓(発見・適用・創造)」「3.競争力の強化」この3極をスパイラルとしてビジネス展開を行い、それを上昇させる取り組みを進める事によって、CG制作プロダクションを発展させる事が出来ると述べられた。1983年、日本におけるCGプロダクションの黎明期から29年に亘る企業活動を継続させ、世界に向けたビジネスの展開を図るポリゴン・ピクチュアズ社の企業理念と言える。
そこには、創立者の河原敏文氏のモットーである「誰もやった事の無い事」「圧倒的なクオリティ」「世界に向けて発信する」を追求するクリエイティブなエネルギーが、ポリゴン・ピクチュアズ社のDNAとして受け継がれている。円高と言う厳しい経済状況の中でも、アメリカで放映中のテレビシリーズ「Transformers Prime」の様な、大きなプロジェクトを実現させて来ている。経営の歴史の中では、厳しい状況も何回か乗り越えて来ているが、このモットーは時代の状況にアジャストさせながらも、ポリゴン・ピクチュアズ社の中で常に進化させて来ている。
ポリゴン・ピクチュアズ社の取り組みで特筆されることは、1993年頃に制作したCGキャラクターをタレントとしてライセンス・ビジネスを展開した事である。正に新しい市場開拓への取り組みであった。これ等の企業活動の変遷で蓄積されたノウハウや、CG制作パイプライン、技術開発力を基盤として、創業時から追求してきた「企画提案」によるプロダクションから受託制作へと方向展開を行い、現在は95%は受託制作であり、その内海外からの受注が約7割を占めるまでになって来ており、残りは遊戯系コンテンツ等の制作となっており、これ等が成長のドライバーとなっている。
海外からのテレビシリーズの様な大型プロジェクトを受注する為には、5年程の長い時間をかけた営業活動や、トライアル制作の要求に対応して行かなければならない。その様な制作の実績が評価されて、次のビジネスへと進展して行くのが通常であり、そのテスト期間にも耐えられなければ、その後の具体的なビジネスは実現しない。一方、大型プロジェクトの利点は、長期にわたる仕事が継続されることにより、制作のパイプラインが有効に稼働し、また人材の確保や能力の育成にも取り組める事である。分業化による制作者の専門性を高め、マトリックスによる制作管理を進めるなど、効率的な工程管理の手法が導入されている。しかし、昨今の為替のリスクは、利益確保にとって厳しい状況をもたらしていると、経営の難しさを実感しているとも述べられた。
競争力の強化については、「人材面、運営面、技術面」での取り組みに力を入れている。特に、ポリゴン・ピクチュアズ社の特徴は多くの外国人を採用している事である。現在約330人程の要員がいるが、その内約60人位の外国人(20カ国)が、日本人スタッフと一緒に仕事をしている。異文化の人たちとの仕事により、日本人の仕事のやり方にも変化が起きる事を期待し、日常的に英語と日本語の両方でコミュニケーションが図れるような環境にしている。基本的に、社員には英語が必須である。一方、人を大切にする経営に配意し、社員一人一人のモティベーションが高まる様な、魅力あるステージを作ることにも気を配っている。
CG制作においては表現が成果物のクオリティであり、日本が持つセルアニメーションの技術とCG技術の融合を図る事により、2D、3Dのハイブリッドな技術による日本独自の表現のクオリティが実現すると考え、更なる挑戦的な取り組みを進めている。ハードルは高いが、その事が世界に対して競争力を持つものになると塩田氏は考えている。

講演後のディスカッションでは。専門性を高めた分業化が進む中での人材の採用に関する条件や、将来のビジネスの方向性などに付いて、熱心なディスカッションが行われた。現状の受託制作中心のビジネスにも限界があり、将来は「価値の創造」に戻って、企画提案による長編の映画制作が出来る様な基盤を再構築して行きたいと、ポリゴン・ピクチュアズ社の次のステージに向けた高い意欲を示された。
参加者からの反応も、クリエイティブ系企業がビジネスとして成功する流れを知る事が出来た、海外での取引の話が参考になった、企業経営の視点が一般製造業の管理手法を適用可能としている点が参考になった、など多くの意見が寄せられた。国際的な企業であるポリゴン・ピクチュアズ社の、今後の展開に大いに期待したい。

(文責:為ヶ谷秀一)




講師プロフィール:
兵庫県出身。 6歳の時に家族共にアメリカに渡り、以降 9年間をカリフォルニアで過ごす。兵庫県の六甲学院高校卒。上智大学法学部国際関係法学科を卒業後、1991年に新日本製鐵株式会社に入社。1996年に同社退社、ビジネス・コンサルタントを経て 1997年にドリーム・ピクチュアズ・スタジオ(DPS)の立上げに参画。1999年 3月からポリゴン・ピクチュアズに転進、制作部長を経て 2003年6月に同社代表取締役社長就任。
Prix Ars Electronica (オーストリアで開催)及び SIGGRAPH(米国で開催)で日本人初の部門審査員に選定される他、学生 CG コンテスト、デジタルクリエイターズコンペティション、TBS デジコン 6 等、国内外の審査員を歴任する。08 年米アニメーション専門誌 Animation Magazine が選ぶ「25 Toon Titans of Asia」の一人に選ばれた。
株式会社ポリゴン・ピクチュアズhttp://www.ppi.co.jp/