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BAクリエイターズサロン:
21世紀の情報基盤であるブロードバンドによって、21世紀型サービス、ビジネスを創出する時代、コンテンツが主役になる時代です。BAクリエイターズサロンは、デジタルコンテンツに関係する経営者、管理者、クリエイティブ部門担当等を対象とし、ブロードバンド時代のデジタルコンテンツ・クリエイターの育成・支援を目的に、為ケ谷顧問を座長とし、次世代を担うクリエイターをお招きし、3カ月に1回程度、勉強会と名刺交換会を開催しております。
これまでの実施状況は こちら(PDFファイル)、実施概要は下記に掲載。
Jun 25, 2010
第10回BAクリエイターズサロン
講師:朝倉民枝氏(クリエイター/株式会社グッド・グリーフ代表)
開催日時:平成22年6月25日(金)18:30~20:30
開催場所:東放学園キャリアーサポートセンター
テーマ:子供のためのデジタルコンテンツを考える
参加者数:72名
講演会場風景と講演概要
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「子どものためのデジタルコンテンツを考える」と題した朝倉さんの講演では、自らワークショップなどで実践的な取り組みを進め、デジタルを道具としてどの様に子どもの世界に適応させて行ったら良いかを考えながら、「ピッケのおうち」や「ピッケのつくるえほん」などの開発を進めてきたかを、具体的な事例を示しながらお話しして頂きました。
朝倉さんは、子ども服のデザイナーから、コマ撮りアニメーション、3DCGなどの仕事を通して、子どもの世界に永く接して来ておられます。その経験の中で、未就学児を対象としたインターネット上で、親子で楽しむインタラクティブ絵本「ピッケのおうち」を自ら開発しました。その動機は「幼いころに味わう(嬉しい・楽しい)は、それからの人生を歩む力になる」、そして「子どもたちと新しいメディアの最初の出あいを幸せにしたい」との思いからであると言います。当初、デジタルやコンピュータは幼児には向かない、と言われていましたが、進化の早いこの分野の可能性を感じていたそうです。しかし、そこでも大事な事は、(子ども)×(親)×(アプリケーションソフト)の三者が、しっかりとそれぞれの立場を成り立たせ、コンピュータの画面と画面の外の実生活とを、シームレスにつなぐシステムのデザインが無ければならないと言います。コンピュータに依存するのではなく、何時もお母さん(お父さん)と一緒に時間が過ごせるようにするために、システムはそれをお手伝いをする機能に徹したシステムデザインを朝倉さんは心がけています。その成果は「おはなしつくり」のソフトである「ピッケのつくるえほん」へと発展しています。子どもたちを観察していると、自分の世界に居る時に、自らおはなしをつくっていることがあります。物語をつくることは、子どもたちの心を楽しみで満たす事が出来ると考えて、コンピュータ上でおはなしを紡ぎ、プリントアウトすることでそれを絵本と言う手に取れる形にします。それを、自分で読んで人に聞かせることで、周りに居る人たちに喜んでもらえる状況を作り出す事により、与えられる事ばかり多くなっている状況から、自分でも作る側になる事ができ、その境を越えることが実現します。このプロセスで最も大切な事は、周りに信頼する人が居て、子どもの心に安心して何かに取り組める安全地帯を育てる事であると言います。母親の肌のぬくもりを感じる膝の上で絵本を作り、母親の声が聞こえる距離で自らがおはなしをし、そしてその本を持って外に出て行けるようになる事が、コミュニケーションの発達における基盤になると言われました。
参加者との間でも、このシステムの具体的な活用シーンに対する提案や、コラボレーションの可能性について活発な交流が行われました。ビジネスを考えることも大切ではありますが、それと共に社会的な活動としても発展させて行くとこが出来るのではないかとの提案もありました。講演後、朝倉さんの子どもたちに対する温かく、そして真摯な取り組み姿勢に感動した、と言う感想が多く寄せられました。
朝倉さんは、「子どものためのデジタルコンテンツ」を考える上で大切にしている事を、5つ示されました。
- アクティビティ全体をデザイン
- マニュアル不要にわかりやすく
- 余分な枝葉は落とす
- 丹精こめてつくる
- ソフトのデザインは作り手の思想
最後に「子どもの事を考える事は、未来を考える事である。」と締めくくられました。 朝倉さんの活動の周りにも、子どものためのデジタルコンテンツを作る人々が集まり始めているとのことですので、これからのますますのご活躍を期待しています。
(文責:為ヶ谷秀一)

(「ピッケのおうち」「ピッケのつくるえほん」を体験する参加者)
講師プロフィール:
クリエイター。株式会社グッド・グリーフ代表。ファミリア子ども服デザイナーを経て、3Dコンピューターグラフィックス制作を始める。NHK 子ども番組CG制作、富士通TEOプロジェクト参加(CGディレクター) などの後、活動の場をインターネットにシフト。ウェブサイト「ピッケのおうち」は、キッズデザイン賞および子ども向けウェブサイトとして初めてのグッドデザイン賞を受賞。2009 年、おはなしづくりソフト「ピッケのつくるえほん」をリリース。2005 年、IPA 未踏ソフトウェア創造事業 スーパークリエータ認定。
関連URL:「ピッケのつくるえほん」「ピッケのおうち」http://www.pekay.jp/